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 『義血侠血』 青空文庫

「なんと皆さん、業肚《ごうはら》じゃございませんか。おとなげのないわけだけれど、こういう行き懸かりになってみると、どうも負けるのは残念だ。おい、馬丁《べっとう》さん、早く行《や》ってくれたまえな」
「それもそうですけれどもな、老者《おやじ》はまことにはやどうも。第一この疝《せん》に障りますのでな」
 と遠慮がちに訴うるは、美人の膝枕せし老夫《おやじ》なり。馬は群がる蠅と虻との中に優々と水飲み、奴は木蔭《こかげ》の床几に大の字なりに僵《たお》れて、むしゃむしゃと菓子を吃《く》らえり。御者は框《かまち》に息《いこ》いて巻き莨《たばこ》を燻《くゆら》しつつ茶店の嚊《かか》と語《ものがた》りぬ。

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