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 『歌行燈』 従吾所好

「背〈せな〉を貸せ、宗山。」と言ふとともに、恩地喜多八は疲れた状して、先刻から其の裾に、大きく何やら踞まつた、形のない、ものの影を、腰掛くるやう、取つて引敷くが如くにした。
 路一筋くして、掛行燈の更けた彼方此方、杖を支いた按摩も交つて、ちら/\と人立ちする。


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