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 『婦系図』 青空文庫

 と河野は自分には勢《いきおい》のない、聞くものには張合のない口吻《くちぶり》で、
「だが、さんが、」
「母様が何だ。母様が娶《もら》うんじゃあるまい、君が女房にするんじゃないか。いつでもその遣方だから、いや、縁談にかかったの、見合をしたの、としばしば聞かされるのが一々勘定はせんけれども、ざっと三十ぐらいあった。その内、君が、自分で断ったのは一ツもあるまい。皆母さんがこう云った。叔父さんが、ああだ、父さんが、それだ、と難癖を附けちゃ破談だ。

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