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『義血侠血』 青空文庫
と遠慮がちに訴うるは、美人の膝枕せし老夫《おやじ》なり。馬は群がる蠅と虻との中に優々と水飲み、奴は木蔭《こかげ》の床几に大の字なりに僵《たお》れて、むしゃむしゃと菓子を吃《く》らえり。御者は框《かまち》に息《いこ》いて巻き莨《たばこ》を燻《くゆら》しつつ茶店の嚊《かか》と語《ものがた》りぬ。
「こりゃ急に出そうもない」と一人が呟けば、田舎女房と見えたるがその前面《むかい》にいて、
「憎々しく落ち着いてるじゃありませんかね」
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