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 『婦系図』 青空文庫

「それから、財産は先刻《さっき》も謂った通り、一人一人に用意がしてある。病気なり、何なりは、父様も兄も本職だから注意が届くよ。その他は万事母様が預かって躾《しつ》けるんだ。
 好嫌《すききらい》は別として、こちらで他に求める条件だけは、ちゃんとこちらにも整えてあるんだから、強《あなが》ち身勝手ばかり謂うんじゃない。
 けれども、品行の点は、疑えば疑えると云うだろう。そこはね、性理上も斟酌《しんしゃく》をして、そろそろ色気が、と思う時分には、妹たちが、まだまだ自分で、男をどうのこうのという悪智慧《わるぢえ》の出ない先に、親の鑑定《めがね》で、婿を見附けて授けるんです。

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