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 『海神別荘』 華・成田屋

美女  (夢見るようにその瞳を〓(みひら)く)ああ、(歎息す)もし、誰方(どなた)ですか。・・・私の身体(からだ)は足を空に、(馬の背に裳(もすそ)を掻緊む(かいしむ))倒(さかさま)に落ちて落ちて、波に沈んでいるのでしょうか。
女房  いいえ、おしいお髪(おぐし)一筋、風にも波にもお縺れはなさいません。何でお身体(からだ)が倒などと、そんな事がございましょう。
美女  いつか、いつですか、昨夜(ゆうべ)か、今夜か、前(さき)の世ですか。私が一人、楫(かじ)も櫓もない、舟に、筵に乗せられて、波にながされました時、父親の約束で、海の中へ捕られて行く、私へ供養のためだと云って、船の左右に、前後(あとさき)に、波のまにまに散って浮く・・・蓮華燈籠が流れました。

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