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『日本橋』
青空文庫
「じゃ、やっぱりお帰りがけね、お待ちなさいよ。」
と抜出ていた簪を、反らした掌で、スッと留めて、
「そうね……姉さんの御志で、お雛様の栄螺と蛤を、一石橋から流すと云うのに一人ぽっち。それまで檜物町に差向いでいた芸者が、一所に着いて来ない意気じゃ、成程出来ていませんね。」
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