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『雛がたり』 青空文庫
いや、実際六《むつ》、七歳《ななつ》ぐらいの時に覚えている。母親の雛を思うと、遥かに竜宮の、幻のような気がしてならぬ。
ふる郷《さと》も、山の彼方に遠い。
いずれ、金目《かねめ》のものではあるまいけれども、紅糸で底を結えた手遊《おもちゃ》の猪口《ちょく》や、金米糖の壷一つも、馬で抱き、駕籠で抱えて、長い旅路を江戸から持って行ったと思えば、千代紙の小箱に入った南京砂《なんきんずな》も、雛の前では紅玉である、緑珠《りょくしゅ》である、皆敷妙《しきたえ》の玉である。
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