検索結果詳細


 『婦系図』 青空文庫

「だってお前、急に帰りそうもないじゃないか。」
 と云って、め組の蓋を払った盤台を差覗くと、鯛の濡色輝いて、広重の絵を見る風情、柳の影は映らぬが、河岸の朝の月影は、まだその鱗に消えないのである。
 俎板をポンと渡すと、目の下一尺の鮮紅《からくれない》、反《そり》を打って飜然《ひらり》と乗る。

 79/3954 80/3954 81/3954


  [Index]