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『婦系図』 青空文庫
「幸か、不幸か、そりゃ知らん、が、私は厭だ。一門の繁栄を望むために、娘を餌にするの、嫁の体格検査をするの、というのは真平御免だ。惚れたからは、癩《なり》でも肺病でも構わんのでなくっちゃ、妙ちゃんの相談は決してせん。勿論お嬢は瑕《きず》のない玉だけれど、露出《むきだ》しにして河野家に御覧に入れるのは、平相国清盛に招かれて月が顔を出すようなものよ。」といささか云い得て濃い煙草を吻《ほっ》と吐《つ》いたは、正にかくのごとく、山の端《は》の朧気《おぼろげ》ならん趣であった。
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