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 『二、三羽――十二、三羽』 青空文庫

 しかもそのくせ、卑怯《ひきょう》にも片陰を拾い拾い小さな社の境内だの、心当《こころあたり》の、邸の垣根を覗いたが、前年の生垣も煉瓦にかわったのが多い。――清谷《しみずだに》の奥まで掃除が届く。――梅雨の頃は、闇黒《くらがり》に月の影がさしたほど、あっちこっちに目に着いた紫陽花も、この二、三年こっちもう少い。――荷車のあとには芽ぐんでも、自動車の轍《わだち》の下には生えまいから、いまは車前草《おんばこ》さえ直ぐには見ようたって間に合わない。

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