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 『古狢』 青空文庫

 椎の樹婆叉の話を聞くうちに、ふと見ると、天井の車麩に搦《から》んで、ちょろちょろと首と尾が顕《あら》われた。その上下《うえした》に巻いて廻るのを、が伝う、と見るとともに、車麩がくるくると動くようで、因果車が畝《うね》って通る。……で悚気《ぞっ》としたが、熟《じっ》と視《み》ると、鼠か、溝鼠《どぶねずみ》か、降る雨に、あくどく濡れて這《は》っている。……時も時だし、や、小さな狢が天井へ、とうっかり饒舌《しゃべ》って、きれいな鳥を蓮池へ飛ばしたのであった。

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