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 『婦系図』 青空文庫

 所以《ゆえ》ある哉《かな》、主税のその面上の雲は、河野英吉と床の間の矢車草……お妙の花を争った時から、早やその影が懸ったのであった。その時はお蔦の機知《さそく》で、柔能《よ》く強《ごう》を制することを得たのだから、例《いつも》なら、いや、女房は持つべきものだ、と差対《さしむか》いで祝杯を挙げかねないのが、冴えない顔をしながら、湯は込んでいたか、と聞いて、フイと出掛けた様子も、その縁談を聞いた耳を、道ので洗わんと欲する趣があった。

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