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 『化鳥』 青空文庫

「あれ、だつてもね、そんなこと人の前でいふのではありません。お前と、母様《おつかさん》のほかには、こんないゝこと知つてるものはないのだから、分らない人にそんなこといふと、怒られますよ。唯、ねえ、さう思つて、居れば、可《いゝ》のだから、いつてはなりませんよ。可《いゝ》かい。そして先生が腹を立つてお憎《にく》みだつて、さういふけれど、何そんなことがありますものか。其は皆お前がさう思ふからで、あの、雀だつて餌を与つて、拾つてるのを見て、嬉しさうだと思へば嬉しさうだし、頬白がおぢさんにさゝれた時悲しい声だと思つて見れば、ひい/\いつて鳴いたやうに聞こえたぢやないか。
それでも先生が恐いをしておいでなら、そんなものは見て居ないで、今お前がいつた、其うつくしい菊の花を見て居たら可《いゝ》でしやう。ね、そして何かい、学校のお庭に咲いてるのかい。」

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