検索結果詳細


 『婦系図』 青空文庫

 渠の道学は、宗教的ではない、倫理的、むしろ男女交際的である。とともに、その痘痕《あばた》と、細君が若うして且つ美であるのをもって、処々の講堂においても、演説会においても、音に聞えた君子である。
 謂うまでもなく道徳円満、ただしその細君は三度目で、前《さき》の二人とも若をして、目下《いま》のがまた顔色が近来、蒼《あお》い。
 と云ってあえて君子の徳を傷《きずつ》けるのではない、が、要のないお饒舌《しゃべり》をするわけではない。大人は、自分には二度まで夫人を殺しただけ、盞《さかずき》の数の三々九度、三度の松風、ささんざの二十七度で、婚姻の事には馴れてござる。

 866/3954 867/3954 868/3954


  [Index]