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『木の子説法』 青空文庫
千葉だそうです。千葉の町の大きな料理屋、万翠楼《ばんすいろう》の姉娘が、今の主人の、その頃医学生だったのと間違って。……ただ、それだけではないらしい。学生の癖に、悪く、商売人じみた、はなを引く、賭碁《かけご》を打つ。それじゃ退学にならずにいません。佐原の出で、なまじ故郷が近いだけに、外聞かたがた東京へ遁出《にげだ》した。姉娘があとを追って遁げて来て――料理屋の方は、もっとも継母だと聞きましたが――帰れ、と云うのを、男が離さない。女も情を立てて帰らないから、両方とも、親から勘当になったんですね、親類義絶――つまるところ。
一枚、畚褌の上へ引張《ひっぱ》らせると、脊は高し、幅はあり、風采《ふうさい》堂々たるものですから、まやかし病院の代診なぞには持って来いで、あちこち雇われもしたそうですが、脉《みゃく》を引く前に、顔の真中《まんなか》を見るのだから、身が持てないで、その目下の始末で。……
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