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 『春昼』 泉鏡花を読む

 戸張を垂れた御厨子の傍に、造花の白蓮の、気高く俤立つに、頭を垂れて、引退くこと二三尺。心静かに四辺を見た。
 合天井なる、々白々牡丹の花、胡粉の俤消え残り、も散留つて、恰も刻んだものの如く、髣髴として夢に花園を仰ぐ思ひがある。
 それら、花にも台にも、丸柱は言ふまでもない。狐格子、唐戸、桁、梁、〓《みまは》すものの此処彼処、巡拝の札の貼りつけてないのは殆どない。

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