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『婦系図』 青空文庫
諸家お出入りの媒妁人、ある意味における地者稼《じものかせぎ》の冠たる大家、さては、と早やお妙の事が胸に応えて、先ずともかくも二階へ通すと、年配は五十ばかり。推しものの痘痕《あばた》は一目見て気の毒な程で、しかも黒い。字義をもって論ずると月下氷人でない、竈下《かまのした》炭焼であるが、身躾《みだしなみ》よく、カラアが白く、磨込んだ顔がてらてらと光る。地《じ》の透く髪を一筋梳《すき》に整然《きちん》と櫛を入れて、髯の尖《さき》から小鼻へかけて、ぎらぎらと油ぎった処、いかにも内君が病身らしい。
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