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 『婦系図』 青空文庫

 取りあえず、スースーと歯をすすって、ニヤニヤと笑いかけて、何か令嬢お身の上に就いて、下聴《したぎき》をするのが、御賛成なかったとか申すことでごわりましたな。御説に因れば、好いた女なら娼妓《じょろう》でも(と少しおまけをして、)構わん、死なば諸共にと云う。いや、人生意気を重んず、(ト歯をすすって)で、ごわりまするが、世間もあり親もあり……
 とこれから道学者の面目を発揮して、河野のためにその理想の、道義上完にして非難すべき点の無いのを説くこと数千言。約半日にして一先ず日暮前に立帰った。ざっと半日居たけれども、飯時を避けるなぞは、さすがに馴れたものである。

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