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『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径
――旅僧は爾時、南無仏と唱えながら、漣の如き杉の木目の式台に立向い、かく誓って合掌して、やがて笠を脱いで一揖したのであった。――
「それから、婆さんに聞きました通り、壊れ壊れの竹垣について手探りに木戸を押しますと、直ぐに開きましたから、頻《しきり》に前刻《さっき》の、あの、えへん! えへん! 咳《せきばらい》をしながら――酷《ひど》くなっておりますな――芝生を伝わって、夥しい白粉の花の中を、これへ。お縁側からお邪魔をいたしました。
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