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『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径
「それから、婆さんに聞きました通り、壊れ壊れの竹垣について手探りに木戸を押しますと、直ぐに開きましたから、頻《しきり》に前刻《さっき》の、あの、えへん! えへん! 咳《せきばらい》をしながら――酷《ひど》くなっておりますな――芝生を伝わって、夥しい白粉の花の中を、これへ。お縁側からお邪魔をいたしました。
あの白粉の花は見事です。ちらちら紅色のが交って、咲いていますが、それにさえ、貴方、法衣《ころも》の袖の障るのは、と身体《からだ》をすぼめて来ましたが、今も移香《うつりが》がして、憚《はばかり》多い。
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