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 『人魚の祠』 青空文庫

 其奴《そいつ》が、がさ/\と寝台《ねだい》の下へ入つて、床の上をずる/\と引摺つたと見ると、婦《をんな》が掻巻から二の腕をく抜いて、私の居る方へぐたりと投げた。寝乱れて乳も見える。其を片手で秘《かく》したけれども、足のあたりを震はすと、あゝ、と云つて其の手も両方、空《くう》を掴むと裙《すそ》を上げて、弓形《ゆみなり》に身を反らして、掻巻を蹴て、転《ころ》がるやうに衾を抜けた。……

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