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『五大力』
従吾所好
「あゝ、寒い。」
と車の上で
白
い呼吸〈いき〉。樹から落ちた其の烏のやうに、黒い外套の袖を窘〈すく〉めて乗つて、現々〈うと/\〉と睡つて居たのが、いま宮の前を越した処で、車が不意に留つたので、はつと冷い観世紙捻〈くわんぜより〉で、鼻を突かれた体に目を覚ました、我家の門〈かど〉だと思つたらう。
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