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 『木の子説法』 青空文庫

 もっとも三十年も以前の思出である。もとより別荘などは影もなくなった。が、狸穴、我善坊の辺だけに、引潮のあとの松《みる》に似て、樹林は土地の隅々に残っている。餅屋が構図を飲込んで、スケッチブックを懐に納めたから、ざっと用済みの処、そちこち日暮だ。……大和田は程遠し、ちと驕《おご》りになる……見得を云うまい、これがいい、これがいい。長坂の更科《さらしな》で。我が一樹も可なり飲《い》ける、二人で四五本傾けた。

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