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 『星あかり』 泉鏡花を読む

 然まで大きくもない寺で、和尚と婆さんと二人で住む。門まで僅か三四間、左手は祠の前を一坪ばかり花壇にして、松葉牡丹、鬼百合、夏菊など、雑植の繁つた中に、向日葵の花は高く蓮の葉の如く押被さつて、何時の間にか星は隠れた。鼠色の空はどんよりして、流るゝ雲も何にもない。なか/\気が晴々しないから、一層端へ行つて見ようと思つて、さて、ぶら/\。

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