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 『婦系図』 青空文庫

「早瀬の細君《レコ》はちょうど(二十《はたち》)と見えるが三だとサ、その年紀《とし》で酸漿を鳴らすんだもの、大概素性も知れたもんだ、」と四辺《あたり》近所は官員《つとめにん》の多い、屋敷町の夫人《おくさま》連が風説《うわさ》をする。
 すでに昨夜《ゆうべ》も、神楽坂の縁日に、桜草を買ったついでに、可いのを撰《よ》って、昼夜帯の間に挟んで帰った酸漿を、隣家《となり》の娘――女学生に、一ツ上げましょう、と言って、そんな野蛮なものは要らないわ! と刎《は》ねられて、利いた風な、と口惜《くやし》がった。

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