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 『半島一奇抄』 青空文庫

 といった場処で。――しかし、昨年――今度の漂流物は、そんな可厭《いや》らしいものではないので。……青竹の中には、何ともたとえがたない、しい女像がありました。ところが、天女のようだとも言えば、女神の船玉様の姿だとも言いますし、いや、ぴらぴらの簪《かんざし》して、翡翠《ひすい》の耳飾を飾った支那《しな》の夫人の姿だとも言って、現に見たものがそこにある筈《はず》のものを、確《しか》と取留めたことはないのでございますが、手前が申すまでもありません。いわゆる、流れものというものには、昔から、種々の神秘な伝説がいくらもあります。それが、目の前へ、その不思議が現われて来たものなんです。第一、竹筒ばかりではない。それがもう一重《ひとえ》、セメン樽《だる》に封じてあったと言えば、甚しいのは、小さな櫂《かい》が添って、箱船に乗せてあった、などとも申します。

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