検索結果詳細


 『木の子説法』 青空文庫

 ――当時、そういった様子でしてね。質の使、笊《ざる》でお菜漬《はづけ》の買ものだの、……これは酒よりは香《におい》が利きます。――はかり炭、粉米《こごめ》のばら銭買の使いに廻らせる。――わずかの縁に縋《すが》ってころげ込んだ苦学の小僧、(再び、一樹、幹次郎自分をいう。)には、よくは、様子は分らなかったんですが、――ちゃら金の方へ、鴨《かも》がかかった。――そこで、心得のある、ここの主人《あるじ》をはじめ、いつもころがり込んでいる、なかまが二人、一人は検定試験を十年来落第の中老の才子で、近頃はただ一攫千金《いっかくせんきん》の投機を狙《ねら》っています。一人は、今は小使を志願しても間に合わない、慢性の政治狂と、三個《さんにん》を、紳士、旦那、博士に仕立てて、さくら、というものに使って、鴨を剥《はい》いで、骨までたたこうという企謀《たくらみ》です。

 90/231 91/231 92/231


  [Index]