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 『五大力』 従吾所好

 尤も予て病身な所から、深川の木場の可恐く娑婆気な、年紀の少〈わか〉い材木問屋が、不断、色気離れた……と云ふのに詮索は要りません、……大贔屓な処から、それ/\へ運びを附けて、木場の其の自宅の何です、数寄を凝らした離座敷と云つた所で、養生をさせました。湯治場廻りも飽いたと云ふので――
 其の座敷が、肱掛窓の欄干から、すぐにで、襲ね蒲団で、釣も出来れば、蘆の月も汲めるんです。
 自由がきいた我儘もあるんでせう。ぶら/\疾病〈やまひ〉、どつと寝て居るつて程ではないので、月夜なんぞ、川筋をぶら/\歩行く。……容色〈きりやう〉は固〈もと〉より、評判な姿の好い、身体に品のある婦なんですから、水を隔てたり、橋の彼方此方〈あちこち〉で見たものが、弁天様の御影を拝んだ、お姿をあり/\と……分けて界隈の婦たちが真面目に風説をしたんださうです。

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