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 『婦系図』 青空文庫

 台所から、筒袖を着た女房が、ひょっこり出て来て、おやまあ早瀬さん、と笑いかけて、いいえ、やどでもここが御奉公と存じましてね、もうもう賞《ほ》めて賞めて賞め抜いてお聞かせ申しましてございますよ。お嬢様も近々御縁が極《きま》りますそうで、おめでとう存じます、えへへ、と燥《はしゃ》いだ。
 余計な事を、と不興なをして、不愛想に分れたが、何も車屋へ捜りを入れずともの事だ、またそれにしても、モオニング着用は何事だと、苦々しさ一方ならず。

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