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 『夜行巡査』 青空文庫

 老人はとっさの間に演ぜられたる、このキッカケにも心着かでや、さらに気に懸《か》くる様子もなく、
「なあ、お香、さぞおれがことを無慈悲なやつと怨《うら》んでいよう。吾《おり》ゃおまえに怨まれるのが本望だ。いくらでも怨んでくれ。どうせ、おれもこう因業じゃ、いいに様もしやアしまいが、何、そりゃもとより覚悟の前だ」

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