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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 と、よく私を遊ばせながら、母も少《わか》かった、その娘たちと、毬も突き、追羽子もした事を現のように思出《おもいだ》しましたから、それを捜せば、きっと誰か知っているだろう、と気の着いた夜半《よなか》には、むっくり起きて、嬉しさに雀躍《こおどり》をしたんですが、貴僧《あなた》、その中の一人は、まだ母の存命の内に、雛祭の夜なくなりました。それは私も知っている――
 一人は行方が知れない、と言います……
 漸《やっ》と一人、これは、県の学校の校長さんの処へ縁づいているという。先ず可し、と早速訪ねて参りましたが、町はずれの侍町、小流があって板塀続きの、邸ごとに、むかし植えた紅梅が沢山あります。まだその古樹がちらほら残って、真盛りの、朧月夜の事でした。

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