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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 漸《やっ》と一人、これは、県の学校の校長さんの処へ縁づいているという。先ず可し、と早速訪ねて参りましたが、町はずれの侍町、小流があって板塀続きの、邸ごとに、むかし植えた紅梅が沢山あります。まだその古樹がちらほら残って、真盛りの、朧月夜の事でした。
 今貴僧《あなた》が此へ入らっしゃる玄関前で、紫雲英《げんげ》の草を潜る兎を見たとおっしゃいました、」
 「いや、肝心のお話の中へ、お交ぜ下すっては困ります。そうは見えましたものの、まさかかような処へ。あるいはその……猫であったかも知れません。」

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