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 『夜行巡査』 青空文庫

「なあ、お香、さぞおれがことを無慈悲なやつと怨《うら》んでいよう。吾《おり》ゃおまえに怨まれるのが本望だ。いくらでも怨んでくれ。どうせ、おれもこう因業じゃ、いい死に様もしやアしまいが、何、そりゃもとより覚悟の前だ」
 真になりて謂う風情、酒の業《わざ》とも思われざりき。女《むすめ》はようよう口を開き、
「伯父さん、あなたまあ往来で、何をおっしゃるのでございます。早く帰ろうじゃございませんか」

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