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 『夜行巡査』 青空文庫

 真顔になりて謂う風情、酒の業《わざ》とも思われざりき。女《むすめ》はようよう口を開き、
「伯父さん、あなたまあ往来で、何をおっしゃるのでございます。早く帰ろうじゃございませんか」
 と老人の袂《たもと》を曳き動かし急ぎ巡査を避けんとするは、聞くに堪えざる伯父の言《ことば》を渠《かれ》の耳に入れじとなるを、伯父は少しも頓着《とんじゃく》せで、平気に、むしろ聞こえよがしに、

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