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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 娘は、別に異《かわ》ったこともありませんが、容色《きりょう》は三人の中で一番佳かった――そう思うと、今でも目前《めさき》に見えますが。
 その娘です、余所へは遊びに来ましたけれど、誰も友達を、自分の内へ連れて行った事はありませんでした。
 寄合って、遊事《あそびごと》を。これからおもしろく成ろうという時、不意に母《おっか》さんがお呼びだ、とその媼《ばあ》さんが出て来て引張って帰ることが度々で、急にいなくなる、跡の寂しさといったらありません。――先の内は、自分でも厭々引立てられるようにして帰り帰りしたものですが、一ツは人の許へ自分は来て、我が家へ誰も呼ばない、という遠慮か、妙な時に不図立っちゃ、独《ひとり》で帰ってしまうことがいくらもあったんです。

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