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 『婦系図』 青空文庫

 一陣《ひとしきり》風が吹くと、姿も店も吹き消されそうで哀《あわれ》な光景《ありさま》。浮世の影絵が鬼の手の機関《からくり》で、月なき辻へ映るのである。
 さりながら、縁日の神仏は、賽銭《さいせん》の降る中ならず、かかる処にこそ、影向《ようごう》して、露にな濡れそ、夜風に堪えよ、と子《おやこ》の上に袖笠して、遠音に観世ものの囃子《はやし》の声を打聞かせたまうらんよ。

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