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『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径
寄合って、遊事《あそびごと》を。これからおもしろく成ろうという時、不意に母《おっか》さんがお呼びだ、とその媼《ばあ》さんが出て来て引張って帰ることが度々で、急にいなくなる、跡の寂しさといったらありません。――先の内は、自分でも厭々引立てられるようにして帰り帰りしたものですが、一ツは人の許へ自分は来て、我が家へ誰も呼ばない、という遠慮か、妙な時に不図立っちゃ、独《ひとり》で帰ってしまうことがいくらもあったんです。
ですから何だかその娘ばかりは、思うように遊べない、勝手に誘われない、自由にはならない処から、遠いが花の香とかいいます。余計に私なんざ懐くって、(菖《あや》ちゃんお遊びな)が言えないから、合図の石をかちかち叩いては、その家の前を通ったもんでした。
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