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 『木の子説法』 青空文庫

 で、それ以来――事件の起りました、とりわけ暑い日になりますまで、ほとんど誰も腹に堪《たま》るものは食わなかったのです。――……つもっても知れましょうが、講談本にも、探偵ものにも、画にも、名の出ないほどの悪徒なんですから、その、へまさ加減。一つ穴のお螻《けら》どもが、反対に鴨にくわれて、でんぐりかえしを打ったんですね。……夜になって、炎天の鼠《ねずみ》のような、目も口も開かない、どろどろで帰って来た、三人のさくらの半間さを、ちゃら金が、いや怒るの怒らないの。……儲けるどころか、対手方《あいてかた》に大分の借《かり》が出来た、さあどうする。……で、損料……立処《たちどころ》に損料を引剥《ひっぱ》ぐ。中にも落第の投機家なぞは、どぶつで汗ッかき、おまけに脚気《かっけ》を煩っていたんだから、このしみばかりでも痛事《いたごと》ですね。その時です、……洗いざらい、お雪さんの、蹴出しと、数珠と、短刀の人身御供《ひとみごくう》は――

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