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『夜叉ヶ池』 青空文庫
学円 今朝から難行苦行《なんぎょうくぎょう》の体《てい》で、暑さに八九里悩みましたが――可恐《おそろ》しい事には、水らしい水というのを、ここに来てはじめて見ました。これは清水と見えます。
百合 裏の崕《がけ》から湧《わ》きますのを、筧《かけひ》にうけて落します……細い流《ながれ》でございますが、石に当って、りんりんと佳《い》い音《ね》がしますので、この谷を、あの琴弾谷《ことひきだに》と申します。貴客、それは、おいしい冷い清水。……一杯汲んで差上げましょうか。
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