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『五大力』 従吾所好
季子の剣、と材木屋の主人は、額を押へて言ひました。予て五大力の新造へ、自分の座敷から、欄干を翻然と乗つて、大川へ遊びに出たい、と霞は始終望んださうで。人の栄耀〈ええう〉と云ふものは、水を廊下に為たいらしい、驕つたものは、昔からよく、遊山船を造るんです。処が、出来上つたのに、当人の気が違つたのは遺憾〈のこりをし〉い。切めては、と云ふので、其の船を漕出して、隅田川から、川施餓鬼をしながら戻つたのが、あの……其の晩でしたつて――
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