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【ぱられる☆あくあZone:加藤 真理・第0話☆自己紹介】

……あっ、こんにちは。
加藤 真理(かとう まり)です。
塩見中学の1年5組で、ボランティア部に入ってます。
お誕生日は6月20日で、13歳になりました。
血液型はA型です。
身長は……161pです。
口の悪い男子はあたしがボーっとしてるからボーっと背が伸びるなんて言うんですけど、
そんなことないですよね?

【第0話☆自己紹介 −おわり−】

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【ぱられる☆あくあZone:加藤 真理・第1話☆St.バレンタイン1】

「加藤さん、じゃーねー」
「うん、じゃあね」
仙川さんの挨拶にあたしは軽く手を振って応える。
午後のHRも終わって、あとは帰るだけ。
あたしもカバンに教科書とノートを入れて教室を出たの。

「?」
あたしが昇降口で靴に履き替えてから外に出ようとしたとき、河合さんの姿が見えたの。
あれ? 一緒に長沼君もいるみたい。
「河合さ……」
「ち…ちがうよ! もーーっ
 ヒロシくんなんかチョコあげないから!!」
あたし、声をかけようと思ったんだけど、河合さんはそれどころじゃなかったみたい。
「あ…」
走り去る河合さんを、長沼君は力無く見送る。
「……」
「あっ、加藤」
「えっ…その…」
「今日は部活はないのか?」
「う、うん。ボランティア部は毎日あるわけじゃないから」
「そっか…オレはこれから部活なんだ。じゃあな」
「うん…じゃあね」
そう言ってから笑顔を見せた長沼君は、グラウンドの方に走っていった。
でも…長沼君の笑い、少しひきつっていたような気がする。
河合さんと何かあったのかな? 河合さん、走って行っちゃったし。
ケンカかなぁ?
明日はバレンタインなのに。
……そう、明日はバレンタインなのよ。
河合さんには悪いけど、人の心配をしてる場合じゃないわよね、あたしも。
あたしのことだからチョコ作るの、時間がかかるに決まってるもの。
早く帰って準備しないと。
ゴメンね、河合さん、長沼君。

【第1話☆St.バレンタイン1 −おわり−】

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【ぱられる☆あくあZone:加藤 真理・第2話☆St.バレンタイン2】

「これでいいよね?」
包装紙で綺麗にラッピングしたチョコレートを見ながら、あたしは誰にとなく呟く。
うん、綺麗に出来た。
「あとは、明日…。でも、受け取ってくれるかな? それ以前に、あたしに渡す勇気が出来るかな…?」
出来上がったばかりのチョコをテーブルの上に置きながら、あたしはうつむく。
だって分かってるんだもん。
あたし、男の子と話すの苦手だし。しかも、好きな男の子とだなんて……
「ううん」
がんばらなくちゃ。
想いは伝えなきゃ伝わらないんだから。
「……そう言えば、河合さんはどうしたのかしら?」
自分で頑張るって決めたら、急に今日の河合さんのことを思い出しちゃった。
「うまく行くといいけど」
…って、人の心配をしてる場合じゃないよね。
今日はもう寝よう。
明日は緊張の連続になりそうだから。
おやすみなさい…


次の日の朝。つまり、バレンタインデーの当日。
「真理ちゃん、お早う」
「あっ、トンちゃん」
昇降口で上履きに履き替えている途中、挨拶をしてくるトンちゃんに手を振って応える。
「…ねぇ、どうかしたの?」
「えっ?」
「なんか、緊張しているみたいなんだけど」
「…そ、そうかな?」
トンちゃんの言葉に、あたしはビクリと身体を強張らせる。
これじゃ、緊張しているのがバレバレよね。
「……トンちゃん、今日、バレンタインデーでしょ」
「あっ…チョコを」
「やっぱり恥ずかしいし、断られたらどうしようって思うと…それで」
「そっか。真理ちゃん、頑張ってね」
「うん……」
あたしは赤くなりながら頷いた。
トンちゃんも応援してくれるし、ちゃんと渡さないと。
「あれ?」
「……どうしたの?」
「そこの廊下」
トンちゃんが指さす方向にあたしが目をやると、小さな包みを胸に抱いた河合さんが立っていた。
一緒に仙川さんと平山さんもいるみたい。
そっか…河合さん、やっぱりチョコを渡すんだ。
「あっ、ほら長沼くんだよ」
「えっ」
平山さんがそう言って河合さんにウィンクした。確かに長沼君、河合さんの方へ歩いてくる。
「おは…」
「ねーまりりん。4時間目の体育さー」
「え…優ちゃ…」
「あ…」
河合さんは結局チョコを渡さないで行っちゃった。
……他人事じゃないよね。
あたしだって渡せるかどうか。
心配……

【第2話☆St.バレンタイン2 −おわり−】

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【ぱられる☆あくあZone:加藤 真理・第3話☆St.バレンタイン3】

「……」
2時間目のあとの休み時間。
あたしは、チョコの入ったカバンを見つめていた。
「ふぅ…」
どうやって渡そう。
考えれば考えるほど、どうしていいか分からなくなってくる。
「真理ちゃん、一緒におトイレ行きましょ」
「えっ…あ、うん」
考え事をしながら、思わずボーっとしていたあたしは、トンちゃんの言葉で我に返った。
「ユーミ、危ないっ!」
「えっ?」
立ち上がったあたしの後ろから聞こえてくる声。
振り向いたあたしの顔に当たる何か。
「やべっ、加藤に当たっちまった」
「国領! お前が大ファールを打つからだぞ」
「なんや、オレのせいかいな」
あたしは顔に当たった何かを手に取る。
雑巾…?
どうやら、教室の後ろで丸めた雑巾を使って、国領くんたちが野球をやってたみたい。
「大丈夫、真理ちゃん」
「う、うん…」
ハンカチで顔を拭いてくれる声に答えるあたし。
えっ? 誰が?
「乾いてた雑巾だし、そんなに汚くはないと思うけど」
ゆ、ユカイくん?!
あたしの顔を吹いてくれてたのはユカイくんだったの。
そうか…ユカイくんの頭上を越えて、あたしに当たったのね。
「大丈夫?」
「う、うん……」
見上げてくるユカイくんから、あたしは視線を逸らしながら答える。
「ゴメンな、加藤」
「うん、大丈夫だから」
国領くんたちも謝ってくれた。
国領くん、林間学校以来、悪いことをしたら素直に謝るようになったのよね。
何かあったのかな?
「気を付けた方がいいよ」
「ああ、分かってるで」
あたしがそんなことを考えていると、国領くんたちは雑巾を持ってまた野球を始めていた。
「それじゃね」
「あっ…」
そして、ユカイくんはあたしの脇をすり抜け、廊下へと出ていった。
あたし、お礼言ってないのに。
ううん、お礼も大事だけど、これは考えようによってはチャンスだもの。
「トンちゃん、ゴメン。おトイレはあとで」
「うん。頑張って」
カバンからチョコを取り出すあたしを見て、トンちゃんは分かってくれたみたい。
「ありがとう」
あたしはチョコを胸に抱いて、廊下へと飛び出した。
ユカイくんは…
いた!
「ユーミちゃん、みぃーっけ!」
「く、くらげちゃん…」
あたしがユカイくんのところに行こうとしたとき、元気一杯な声がユカイくんにかかったの。
あの人は…確か、くらげさん?
……あたし、あの人の本名知らないや。
ユカイくんは「くらげちゃん」って呼んでるけど、本名じゃないよね?
「はい、バレンタインチョコ」
「く、くらげちゃん。何もこんな所で」
「だって、あたし今日用事があるから、部活出られないんだもん。だから早めに渡しとこうと思って」
「だからって…」
「それじゃ、ユーミちゃんバイバーイ」
そう言ってくらげさんは大きく手を振り、困り顔のユカイくんを残して去っていった。
一瞬の静寂。
「ひゅーひゅー」
「やるね、ユーミちゃん」
「もう、やめてよ」
近くをたまたま通っていた男子が、ユカイくんをはやし立てる。
そう言えば、ここって廊下だもの。人通りがあって当然よね。
あたしってば、こんな所でチョコを渡そうとしてたの?
……恥ずかしい。
それに…ユカイくん、女子に人気あるもんね。
チョコも一杯もらってるだろうし。
……
あたしは、トボトボと教室に戻った……

【第3話☆St.バレンタイン3 −おわり−】

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【ぱられる☆あくあZone:加藤 真理・第4話☆St.バレンタイン4】

結局、チョコを渡せないまま4時間目の体育……
「どうしよう…」
頭の中でユカイくんの顔とくらげさんの顔がグルグル回る。
「はぁ…」
あたしは溜め息混じりに着替えを始める。遅くなったらまた代田橋先生に怒鳴られちゃう。
「ふーーっ」
「あ、まりりん、るみ子。どこ行ってたの?」
「チョコレート部室にかくしてきたのぉー」
「え? なんで?」
あたしが上着を脱いでいると、河合さんたちが何か話をしている。
「さっき先輩にきいたんだけどぉ、バレンタインってときどき持ちもの検査するんだてぇ」
「えっ」
「…っ」
河合さんが思わず声をあげる。それってホントなのかな?
もしホントだったら、あたしのチョコは教室に置きっぱなしだから……
ううん、まさかそんなことするわけないよね。
「真理ちゃん、早く行かないと」
「えっ? あっ、ごめんなさい」
いけないいけない。まあボーっとしちゃった。このクセは治さないとね。

キーンコーンカーンコーン
「あー、あたしのチョコがないーー!!」
「げーーっ、オレがもらったやつもないぞ!」
「うわ、ひでーー」
あたしが着替え終わって教室に帰ってくると、何やら中が騒然としている。どうしたのかしら?
「ねえ、どうしたの?」
「あっ、加藤か。なんか持ち物検査があって、チョコを取られてもうたらしいで」
「えっ……」
ウソ…さっきの話はホントだったの?
「お、おい、加藤!」
国領くんを突き飛ばすようにして、あたしは自分のカバンに駆け寄る。
「……」
そこに…あたしのチョコはなかった……
「お、おい…どうしたんや加藤」
「ううん、何でもないよ」
「何でもないって…お前、泣いとんのとちゃうか?」
「えっ?」
国領くんに言われて、あたしは慌てて目をこする。
「大丈夫だから。心配してくれてありがとう」
「ア、アホなこと言うな。ちょっと気になっただけや」
そう言ってそっぽを向く国領くん。
「それより、早よメシ食わんと、昼休み終わってまうで」
「うん…」
あたしは国領くんの言葉に頷いてお弁当を取り出す。
トンちゃんと部室でお弁当を食べる約束をしてたし、早く行かないと。
チョコは……仕方ないよね。
ユカイくんだって、あたしからチョコもらっても迷惑だろうしね。
それより、早く行かないと。
トンちゃん待ってるだろうし。
あたしはお弁当を片手に教室を出る。
「チョコ取られたって!?」
ビクッ…
自分のことを言われたのかと思って、あたしは思わず辺りをうかがう。
「じゃ、今すぐとり返しに行こう!」
「え…いーよ」
そこにいたのは高幡さんと河合さんだった。
そっか…河合さんもチョコ取られちゃったのか。
「よくないでしょ! ほら行くよ!」
「え…」
高幡さんが河合さんを連れて、すごい勢いで走っていった。
チョコ…取り返しに行く気なのかな?
でも…そう簡単に返してくれるのかな?
あたしも取り返しに行った方がいいのかな?
でも…取り返したってユカイくんに渡せなきゃ意味無いし……
そう…渡しちゃったら却って迷惑かもしれないし。
「なんや、まだそないなトコにおったんか?」
「えっ? あっ、国領くん」
いけない。あたしったらまたボーっとしてたみたい。
「なんかあったんかいな? 話せへんことやなかったらゆうてみ」
「……男の子って、好きでもない人からチョコをもらっても嬉しいのかな?」
「えっ…」
あたしの言葉に国領くんの動きが止まる。
「そ、それはやな…う、嬉しいんとちゃうか? 硬派のオレには関係あらへんけど」
「そうなのかな…」
国領くんの答えを聞いてあたしは考え込む。
「だったら、迷惑にはならない?」
「チョコが嫌いでもあらへんかぎり、大丈夫やとは思うで」
「そっか…」
「あれ? 二人して何のお話?」
その声…ユカイくん?!
「ああ、加藤にチョ…」
「だめっ!」
思わずあたしは、上から国領くんの口を塞ぐ。
「もがっ!」
ユカイくんにあたしがチョコのことを聞いてたなんて知られたくない……
「どうしたの?」
「えっ、その…なんでもない……」
「…ことあるかい! いきなりなんの真似や?!」
真っ赤になった国領くんが、あたしの手を振りほどいて怒鳴る。
うう…怒ってる……
そりゃ怒るよね。相談持ち掛けられたかと思ったら、急に口を塞がれて……
え…?
ちょっと待って……
もしかして…ユカイくんから見たら、あたしが国領くんに抱きついたように見えちゃったかも……
「ご、ごめんなさい!」
そう思ったあたしは、居たたまれなくなってその場を駆け出した。
もう…最悪……
ユカイくん、誤解しちゃったかな?
チョコもないし…もう、どうしようもないわ。
……

【第4話☆St.バレンタイン4 −おわり−】

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【ぱられる☆あくあZone:加藤 真理・第5話☆St.バレンタイン5】

……
ガラッ!!
あたしがユカイくんたちから逃げるように走っていると、突然どこかの扉が開いた。
そして、それとほぼ同時に河合さんが飛び出して行った。
ここは…職員室?
あたしが呼吸を整えながら、そんなことを考えていると、
「失礼しました」
高幡さんが職員室から出てきたの。
「高幡さん」
「あっ、加藤じゃない。どうしたの?」
「え…その…」
国領くんに抱きついたところを、ユカイくんに見られたから逃げてきたの。
……なんて、言えるわけないじゃない!
あたしは真っ赤になってうつむく。
「どしたの?」
「……ううん。なんでもない」
「なんでもないって雰囲気じゃないけど……あっ、もしかして加藤もチョコを取り返しに来たの?」
「う、うん…確かに取り返したいけど…もう、ダメって気もするし」
「そうよね。いくら何でも焼却炉に捨てちゃうなんてね」
えっ…?
「焼却炉?」
「そう。井川ったらチョコを焼却炉に捨てたなんて言うのよ。信じらんない!」
ウソ…
信じられない…
ユカイくんにチョコを渡せない……
「でも…変なことも言ったのよね。……って、聞いてる?」
「先生!」
目の前に絶望感が漂ったかと思ったら、あたしは思わず職員室の扉を開けていた。
どうしてだろう? あたしにもよく分からないけど、絶対にあきらめちゃダメって思ったから。
「なんだ、加藤じゃないか。挨拶もせずになんだ」
「先生! チョコを…チョコを返して下さい!」
「ふぅ…お前もか。あんなもんを持って来ちゃいかんことぐらい分かっているだろう?」
「でも…でも…」
「でも、なんだ?」
「今日は、バレンタインデーなんです。だから…」
「そんなことは関係ないだろう。規則は規則だ」
「でも…今日は大切な日だから。想いを伝える日だから……」
「お、おい…」
気付くとあたしは泣いていた。
悲しかったからじゃない…と思う。
ただ…何かで胸がいっぱいだったと思う。
「だから…今日だけは……」
「ふぅ…加藤、あとで保健の先生のところへ行け」
「えっ?」
「分かったら教室に帰れ。午後の授業が始まるぞ」
「は、はい…」
そう言って井川先生は背を向ける。
わけも分からず頷いたあたしは、職員室をあとにした……

【第5話☆St.バレンタイン5 −おわり−】

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【ぱられる☆あくあZone:加藤 真理・第6話☆St.バレンタイン6】

そして、放課後……
井川先生の言ってた言葉の意味をあたしは考えていた。
「加藤さん、どうしたのー?」
「あっ、うん…なんでもない」
帰り支度を終えた仙川さんが、ボーっとしているあたしに声をかけてきてくれたの。
「そう? まぁいいけど。やっぱ今日はみんなどことなく変よね」
「えっ…そう?」
「そりゃそうよ。だって今日はバレンタインなんだもん。それをさー、井川ったらむかつくよね」
「……」
「だったら取り返しにいけばいいじゃない」
あたしが返答に窮していると、後ろから高幡さんが声をかけてきたの。
「あっ、タカちゃん。でもー。取り返しに行ったって怒られるだけなのがオチだし」
「だからって、行動しなきゃ何にもならないでしょ」
行動しなきゃ何にもならない……そうだよね。
「ありがとう高幡さん。あたし行ってくる!」
「??」
いきなり手をつかんでくるあたしに、キョトンとしている高幡さんを残し、あたしは教室を飛び出した。
悩んでいても仕方ない。今は保健室に行こう。
あたしは保健室へと向かって駆け出した。

「失礼します」
「あ、あなたは加藤さんかしら?」
「は、はい。そうですが」
「ふふふ、待ってたわよ」
保健室に入るなり、あたしの名前を言い当てた保健の先生は、ニコニコと笑みを浮かべたの。
「先生、あたし…井川先生に言われて……」
「分かってるわよ。ほら、これでしょ」
そう言って先生は冷蔵庫を開ける。その中には……
「あっ、あたしのチョコ…」
「担任の井川先生から預かっていたの。はい、返すわね」
「……」
話の展開についていけず、目を白黒させるあたし。
「あら、どうしたの?」
「せ、先生。いいんですか?」
「いいも悪いも。元々それは加藤さんのもの。それを加藤さんが取り返しに来たんでしょ」
「で、でも…あたし、校則を……」
「そうね。確かにチョコを持ってくるのは校則違反よね」
「はい…」
「でも、そのチョコって校則を破ってしまうくらい大切なものなんでしょ」
「はい…」
「だからって校則を破ってもいいってわけじゃないけどね」
「はい…」
「何が大事で、どうすればいいのか。それは加藤さん自身で考えてみてね。きっとあなたなら分かるわ」
「はい」
保健の先生の言葉に、あたしは珍しくハッキリとうなずいたの。
「ほらっ、早く想いを告げてきなさい。応援してるわよ」
「あ、ありがとうございます」
あたしは深々と頭を下げて保健室を後にした……
ちゃんと想いを伝えようと、新たに決意をして。

【第6話☆St.バレンタイン6 −おわり−】

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【ぱられる☆あくあZone:加藤 真理・第7話☆St.バレンタイン7】

ガララ…
「はぁ……はぁ……」
チョコを受け取ったあたしは、急いで教室まで戻ったの。
でも、そこにユカイくんはいなかった。
そのかわり…
「なにやっとんや加藤」
不機嫌そうな声があたしにかかる。国領くんだ。
「あっ、国領くん。お昼はごめんなさい」
「もうええ」
ペコリと頭を下げるあたしを右手で制す国領くん。
でも…やっぱりご機嫌斜めみたい。何かあったのかな?
「オレのことより、加藤は放課後の教室でなにしとんや」
「えっ…あの…ユカイくんを探してて」
「ユーミを?」
「うん…」
「なんや、ユーミにチョコでも渡すんか?」
「えっ…いや…あの…渡すというか…その…」
国領くんの言葉に思いっきりパニックになるあたし。
ど、どうして分かったのかな?
「……ふぅ。ユーミなら部活やと思うで」
「えっ…?」
「なんや、聞こえへんかったのか?」
「う、ううん。ありがとう国領くん」
思いがけない国領くんの言葉に、びっくりしたあたしだけど、すぐさま気を取り直してあたしは教室を出る。
ユカイくんは部活に行ってる。
考えてみれば当たり前よね。もう放課後なんだもの。
ユカイくんは海洋生物研究部。
確か部活は理科室でやってるはず。…いるといいけど。

そして理科室の前。
中からは何人かの声が聞こえてくるけど…ユカイくんはいるのかな?
あたしはそーっとドアの上についている窓から中の様子をうかがう。
中には…ユカイくんがいる。
でも、他にも男の人が三人と女の人が二人。
見たことない顔ばっかだけど、全員上級生なのかな?
……ユカイくん楽しそう。
普段はあまり見かけないユカイくんの姿を見たような気がした。
こんな笑顔をくらげさんと一緒に浮かべてるのかな?
なんか悲しいかな。
「あら、そこに誰かいるの?」
ビクッ…
見つかっちゃった。
「なんだ、入部希望者か?」
「部長、こんな時期にですか?」
「なに言ってんだ。うちはいつでも入部希望者歓迎だぞ。ユーミ、ちょっと見てこいよ」
「うん」
あっ、ユカイくんが来ちゃう。
ど、どうしよう……
気付くとあたしは走り出していた。
やっぱりダメ。いくらなんでも人の見ている前でなんて渡せないよ。
廊下の角を曲がったところで、乱れる息を整えながらため息をつくあたし。
いったいどうしたらいいんだろ?
どうしたらユカイくんと二人っきりになれるんだろ。
……そうだ、手紙だ。
ユカイくんにどこか人のいないところに来てもらえばいいんだ。
なんかマンガみたいだけど、下駄箱に入れておけば読んでくれるよね。
それで来てくれなかったらあきらめよう。
そう決めたあたしは紙とペンを取りだした…

【第7話☆St.バレンタイン7 −おわり−】

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【ぱられる☆あくあZone:加藤 真理・第8話☆St.バレンタイン8】

「来ない…」
夕焼けも過ぎ、星が瞬き始めた空を見上げながらあたしは呟いた。
下駄箱に入れておいた手紙、見てくれてないのかな?
もしかして、見たのに来ないとか……
そう思うと胸が張り裂けそうになるくらい悲しくなる。
でも…でも、ユカイくんに限ってそんなことはないよね。
きっと部活が長引いているんだよ。
あたしはそう自分に言い聞かせながらひたすら待ち続けた。

そして……
「真理ちゃん、どこにいるの?」
「……っ!」
来たっ! ついにユカイくんが。
「真理ちゃん?」
「……」
大きな声でユカイくんを呼びたいのに声が出ない。ど、どうして?
「あっ、ここにいたんだ。なーに?」
そうこうしているうちにユカイくんがあたしを見つけてこっちに来る。
あわわわわわ、まだ心の準備が出来ていないのに。
そんなあたしの気落ちを知ってか知らずか、人懐っこい笑顔をユカイくんは浮かべる。
「なーに?」
言わなくちゃ。あたしの気持ちをしっかりと。
「あ、あの…ユカイくん」
「うん」
「こ、これ……」
震える手で取りだしたチョコをなんとかユカイくんに向ける。
「す…す、好きなの」
「えっ…」
つ、ついに言っちゃった。ユカイくんお願い受け取って。
……
1秒? 1分?
なんかものすごーく長く感じる。ユカイくん受け取ってくれないの?
……
もうダメ。もうこの沈黙に耐えられない。
「大好きだから」
そう言うとあたしはユカイくんにチョコを押しつけ、一目散に駆け出した。
結局、チョコを取り出してから一度もユカイくんの顔を見ていない。
なんかものすごく一方的。ユカイくん、気を悪くしていないかな?
でも…恥ずかしくてユカイくんの顔をまともに見れないよ。
はぁぁ…
ユカイくん…… 

【第8話☆St.バレンタイン8 −おわり−】

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【ぱられる☆あくあZone:加藤 真理・第9話☆St.バレンタイン9】

翌日。
ユカイくんの顔を見るのが怖かったから、ホントは学校に行きたくなかった。
でも…ズル休みってわけにはいかないよね。
あたしはトボトボと学校に向かう。
そして教室。
「やだ〜、もうヒロシくんったら」
「なんだよー」
河合さんたち楽しそう。きっとチョコを渡せたんだね。いいなぁ。
「おはよー」
!!
普段より幾分、元気がなさげだけどこの声は…
「おっす、ユーミ」
「おはよ、ハシモ」
ああ、やっぱりユカイくんだ。
「いやー、昨日はお互い不幸だったな」
「え?」
「ほら、井川にチョコ取られちまったじゃねーか」
「ホントにもらってたんか?」
「なんだよ、そーゆーおまえはどうなんだ?」
「チョコなんて、硬派なオレには関係あらへん。そんなんあげる奴ももらう奴もおかしいわ」
「ねぇ…そんなに大きな声で言わない方が……」
「なんでや?」
袖を引っ張るユカイくんの方を向いて国領くんが答える。
気が付くとほとんどの女子の冷たい視線が国領くんに向いてる。
それはそうよね。みんな一生懸命なんだから。
「な、なんや?」
国領くんもこの視線に気づいたみたい。
「オレが…」
「よーし、席に着け」
国領くんがさらに何かを言おうとしたとき、井川先生が入ってきた。
ああ、ユカイくんと話をしなきゃいけないのに……


昼休み。
今日は移動授業が多くて、ユカイくんと話をする機会が今までなかった。
今度こそ。
あたしはそう決意をして席を立つ。
「ユカイくん」
「真理ちゃん」
あたしたちはほぼ同時に名前を呼び合う。
あっ…ユカイくんと目が合っちゃった。なんか恥ずかしい……
「真理ちゃん」
あたしがそんなことを考えてると、もう一度ユカイくんがあたしのことを呼んでくる。
「う、うん…」
あたしが小さくうなずいたそのとき。
「ユーミくん、めっけ!!」
「く、くらげちゃん」
「ねーねー、昨日のチョコおいしかった?」
そう言ってユカイくんに近付いたのは、くらげさんだった。
色々あって忘れてたけど、くらげさんもユカイくんにチョコをあげてたんだよね。
やっぱり、くらげさんもユカイくんのことを好きなのかな?
なんか、そんな気がする…
「ゴメンくらげちゃん。今は用があるから」
「えーっ」
「あっ、ユカイくん。あたしは後でいいから」
「えっ?」
あたしはそう言うとユカイくんの返事を待たずに駆け出した。
なんか…これ以上ユカイくんとくらげさんの会話を聞いていたくなかった。
……変な女の子だって思われちゃったかな?
でも…今のあたしには二人の会話を聞いてることはできないよ。
ユカイくん……

【第9話☆St.バレンタイン9 −おわり−】

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【ぱられる☆あくあZone:加藤 真理・第10話☆St.バレンタイン10】

さらに翌日。
結局、昨日はなにもお話しできなかった。
こんなことじゃダメだよね。ユカイくんにチョコを渡せたって、あたし自身が変わらないと。
でも…今日は日曜日。
ユカイくんに会えないことにホッとしているあたしがいる。
なんでかな?
ううん、理由は分かっている。
返事を聞くのが…怖いから……
断られるのが…怖いから……
こんなことなら…告白なんて……
暗い気持ちがあたしを包み込む。
このまま時間が流れなければ……いや、時間が戻ればいいのに。


でも時間は止まらない。
そして月曜日。
「おはよ〜」
「おはよう」
あたしは朝の挨拶の中をくぐり抜けて自分の席に向かう。
「おはよう、真理ちゃん」
「あ、トンちゃんおはよう」
トンちゃんと挨拶をし、あたしは自分の席に着く。
「…真理ちゃん」
「……ユカイくん」
「お話しがあるんだけど昼休みに…いい?」
「……」
小声で話しかけてくるユカイくん。
そんなユカイくんに、あたしはうつむいて何も答えることが出来なかった。

【第10話☆St.バレンタイン10 −おわり−】

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