(上級)


このコ−ナ−は、毎回一つのテ−マを深〜く掘り下げていきます


今回のテ−マは




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はじめに                      
酒 造 米 (お米の成分や資質&分子構造)
米の規格 (お米の検査規格など)
米の性質 (物理的性質や化学的性質等)
酒造好適米 (酒造好適米と呼べるお米等)
精  米




◇◆◇はじめに◇◆◇


日本酒の直接の原料は米ですから、お米の善し悪しが製品の
優劣に直接、影響を与える事は言うまでもありません。
  
酒造りに最も適した好適米は

日常私たちが食べているお米の種類とは
 
全く異なり、お酒造りの目的の為に作られた品種です。
 
  今から、そのお米についてご説明させていただきます。


◆酒造米◆

 先に述べましたように、酒造米は日常食べるお米と違います。
 普段私たちが食べるお米は粳米です。
 お酒造りのお米は「もち米」です。

     【お米の分子構造と成分と資質】

  粳米の胚乳は一般に半透明で、ガラス質と呼ばれています。
  もち米で胚乳は、不透明のものが多いです。
     
デンプンをつくっている分子にはアミロ−スアミロペクチン
の2種類
があります

▲アミロ−スとは、デンプンを構成する主成分の一つです。
「グルコ−ス(分子構造)が長鎖状につながった高分子」
の事です。

▲アミロペクチンとは、デンプンを構成する主成分の一つです。
「グルコ−スが多数の分岐をもって鎖状につながった高分子」の事です。
粳米(食用米)のデンプンは、アミロ−スが17%〜21%ぐらいで
残りはアミロペクチンです。
しかし、もち米(酒造米)は、
アミロ−スをほとんど含まず、

アミロペクチンが大部分
です。

そのため、もち米の方が麹に溶解しやすい資質があり
酒造りに適しています


米の規格   
  お米の規格については、農産物検査法と言う法律により、その規格が
  設けられています。
  玄米の検査規格は品質に関する条項として、銘柄と品位規格の2本立
  をとっています。
  水稲粳米(食用米)意外の醸造用玄米規格としては、醸造用玄米の
  産地品種銘柄として指定された品種に限って適用すると言う規定
  があります。
  生産者はお米を売り渡す前に国の検査を受けなければならないと
  定められています。
  尚、水稲粳米と醸造用玄米との検査規格はかなり違い、
醸造用玄米の方が規格が厳しくなっています。



米の性質

玄米の組織は、果種皮胚芽、及び胚乳よりなり、その割合は
果種皮5〜7%、胚芽2〜3%、胚乳91〜92%です。
果種皮は、果皮と種皮からなり、胚乳はデンプンが大部分で、
胚乳の外層には果種皮に接して湖粉層と言うものがあります。
この層は、タンパク質、脂肪、ビタミンが多い部分です。






【物理的性質】
(1)外観   品種特有の光沢があって粒が充実していて、
しかも良く揃っているもの
良いと言われています。

(2)粒の形 一般に長さ約5mm、幅3mm、厚さ2mm位ですが
酒造好適米に関してはこれよりやや大きいものが良い
と言われます。

せんりゅうじゅう
(3)千粒重
お米の整粒千粒分の重さの事を千粒重といいます。
この値が大きいお米は粒形が大きく、粒の充実度が
高くなります。
普通20〜30gですが、26g以上のものを大粒米と
言います。

代表的品種の千粒重

品   種  千粒重(g   品   種 千粒重(g)
五百万石 約26.1 日本晴 約22.4
山田錦 約26.9 豊  錦 約22.0
美山錦 約27.3 あけぼの 約23.5
玉  栄 約28.0 キョウニシキ 約23.2

(4)心白と腹白 心白とは米粒の中心部に、腹白は背部に、それぞれ
白色不透明の部分にあるお米を言います。

心白の成因は品種特性と(※1)登熟環境の2つが
考えられ一般に大粒米に多くなっています。
心白部には、デンプン粒が粗につまっていて、
柔らかです


このような心白部があると浸漬して吸水しやすく、
製麹の際しては、
麹菌の(※2)破精込みが良く、
酒母・もろみでは糖化が容易
であるため
酒造米として尊ばれます。


※1 登熟環境:稲が出穂して開花、受精してデンプン等が
          集積され稔実するのに要する期間の事

※2 破 精:蒸米に種付けした麹菌が繁殖して
           菌糸が白く見える様になった状態

腹白の成因もほぼ心白と同じですが、精米の際に
この部分だけが早く削り取られるので、真精米歩合が
悪く、酒造米として喜ばれません。


(5) 胴割れ 乾燥中に雨にあたるなどの急激な吸湿や
火力乾燥によって胚乳部に生じたひび
胴割れと言います。

胴割れした米粒が多いと精米・侵漬等によって
砕けやすく、吸水量が多く、胴割れしていない
米粒との吸水速度のつり合いを欠くため、
酒造には適しません。



【化学的性質】
(1)水分 醸造用玄米の水分は14〜15%が標準です。
お米の水分はその品質特に※貯蔵性とは密接な
関係があり、水分の多いお米は貯蔵性が低くなります。

※貯蔵性:お米の貯蔵性の測定法としては発芽歩合、
      玄米の脂肪酸度、精米の新古の判別等があります。
      これらの測定から貯蔵性の良否を判別します。

(2)炭水化物 玄米には約72%の炭水化物が含まれていますが、
ほとんどはデンプンです。
デンプンは米の内部ほど相対的な含有量が
多いと言われます。
ですから、精米する事により含量は増え、
50%白米では約78%の含量になります。


デンプンは麹の酵素の働きで、ブドウ糖になり
ブドウ糖は酵母によりアルコ−ルになります。


(3)タンパク質 お米の中の含窒素化合物はほとんどが
タンパク質です。

タンパク質は麹の酵素によって分解され
※ペプチド及びアミノ酸になって
お酒の呈味成分となります。

アミノ酸は酵母によって高級アルコ−ルに
かわり、お酒の香気成分になります。


このようにお米のタンパク質はお酒の
香味の元になる重要な成分です。
しかし、多すぎると逆にお酒の雑味や着色の
原因
になってしまいます。

ペプチド:アミノ酸の2個以上が結合した化合物
(4)脂肪 玄米には約2%の脂肪が含まれています。

玄米中では胚芽及び外側表部に多く含まれています。

70%白米ではその含有量は0.1%以下になります。

脂肪は酒造上有害な成分です。

(5)無機質 玄米には、約1%の無機質が含まれています。
特に果種皮、糊粉層及び胚芽にあります。

無機質としては、リン酸、カリウム、マグネシウムが
多いです。

玄米を特に常温貯蔵しますと、外層部の
塩素とカリウムの多量及リン酸マグネシウムの少量が
お米の内部に移行します。

無機質含量、特にカリウムの多いお米は
麹の繁殖が良く、もろみの発酵が旺盛になります。



酒造好適米◆
(1) 【酒造好適米と一般米】

食糧庁では、お米の品種のうちお酒造りに適する品種
及びこれらの産地を指定して、醸造用玄米
としています。
酒造業界では、この醸造用玄米を酒造好適米と呼んでいます。
これ以外のお米を一般米または地米といって区分しています


れらの酒造好適米は一般米の規格よりかなり厳しく検査します。
又酒造米は一般に心白のある大粒米です。

(2) 【軟質米と硬質米】

食糧庁で言う軟質米とは、お米の規格で述べた水分含有量の多い
もの
を言いますが、酒造業界でいう軟質米とは、その成分規格を
いうのでなく、酒造実績に基づいて次のような性質のあるものを
言います。

1,吸水性が良いこと
2,麹菌はよく破精込み、製麹しやすこと
3,酒母もろみで溶けやすいもの

以上のような性質をもったお米が酒造好適米と言われます

硬質米はこの逆の性質のお米です。

一般米でも高度に精白する事により以上の様な性質を
得ることも可能です。




精  米
(1) 精米の目的                               
玄米の外側部には、粗タンパク質、脂肪、無機質、ビタミン等が
多く、清酒の香味、色沢を劣化させる為、お米の外側部を
除いてこれらの成分を減少させるのが目的です。