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犬猿の仲

 麗らかな陽射しの下、そこだけは何故か冷たい空気が漂っていた。
「俺はなぁ、アンタみたいな無責任な奴は大ッ嫌いなんだよ。」
「へぇ。それは残念。は結構好きですけどね、貴方みたいな人。」
 小十郎のほうは心底厭そうだが、言われた方は別に気にしていないようで暢気に茶を啜る。その態度に更に怒りを募らせたのか、小十郎は更に厳しい表情で吐き捨てるように言う。
「そう言う言い方が気に食わねぇ。」
「まぁこれは仕方無いです、諦めてください。」
 ひらひらと手を振り答えると、そのまま出された茶菓子に手を伸ばす。見ている方は半ば呆れて二人のやり取りを眺めていたが、これも一つのコミュニケーションと思っているのか止める者は居ない。
「大体、アンタのせいで政宗様がどれだけ……ッ。」
 突然名前を出されて政宗は驚いたが、その後に続く言葉が出ないのでどうしたのかと思う。どうやら思い入れが強すぎて言葉にならないようだ。待っても続く言葉が出ないので、「どれだけ?」と催促の言葉が飛び出した。
「その余裕綽々な鼻っ柱を折りてぇな。」
 米神に青筋を立てて小十郎が唸る様に言う。脇では成実が苦笑しながらお手上げだとばかりに本当に手を上げていた。
「コチュジャンは余裕無さそうですねぇ。リラックス、リラックス〜。」
「その呼び方は止めろッ!」
 小十郎の怒号が響くが、言われた当人は全く気にしていない。どちらかと言えば周りの人間のほうが被害に遭っているようで、耳を抑える者数名。傍観者モードの政宗に至っては、二人の温度差に大笑いする始末だ。
「我侭ですねぇ。そもそも本当は何が気に入らないんですか?」
 いい加減このやり取りに飽きてきたのか、溜息をつきながら質問されると小十郎は険しい顔で答えた。
「あれだけ政宗様に慕われていて、あっさりと……。」
「それは仕方ないじゃないですかさ。」
 昔の事を持ち出され、政宗が慌てる。泣き喚いて暴れた事を持ち出されては敵わないと、止めようとしたが成実に邪魔された。彼は完全に面白がっているのでこの会話がどう決着するのか気になっている。
「せめて政宗様の筆下ろしを手伝ってから別れてくれたって良いじゃねぇか!」
「厭ですよ、何での武器が筆だからってそんな事。」
 色々並べ立てた小十郎の最後の言葉に、何人かが飲んでいた茶を噴出す。政宗はあっさり否定された事の方に力が抜けた。
 今まで呆れて様子を見ていたが叫ぶ。
「何でそっちの方向に話が進むんですかーっ!!」
 麗らかな昼下がり、仲が良いのか悪いのか、二人の言い合いは続いていた。

END

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でも結構仲は良いと言うか気が合うと言うか。認め合ってはいるんでしょうか。