モクジ

● ひだまりのアリス --- 序章 ●

賭けゲームをしよう



「これでもずいぶんと譲歩したのだよ」
男は口元に僅かな笑みを浮かべる。

確かにそうだろうとは思う。
男が自分の要求をたとえ僅かでも聞くことなど、
今までなかったのだから。

たとえ、裏があったとしても。

男を見つめ、そして頷く。
それしかないから。

金も地位も権力も
全てを手にしている男は、笑ったままだ。

いい男だ。
好き嫌いはともかく、
女が十人いたら、十人みんながそう言うだろう。

「待つのは一年だ」
結果を楽しみにしてるよ。

最後の呟きには僅かな嘲笑があった。

男が去った後、一人取り残された。
男の背後に控えていた警護の男たちも当然姿を消している。


やれるものならやってみろってことか。

正直、見通しは厳しい。
そんなに甘いことではないのだ。
容易いことならとっくに行動している。

それでも、
諦めるわけにはいかなかった。

駄目元で突撃するしかないのかな。


とりあえず、許可は出たのだから、
彼の元に行ってみよう。

きっと、なにかがあるはずだから。
モクジ
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