（国内プロダクション公演数概観）

• 圧倒的な東京の数の多さは予想の範囲内だが、これに続くのは大阪、兵庫、愛知、広島であって、神奈川はその次になる。関東圏内においては東京の一極集中が著しいことがわかる。埼玉や千葉にいたっては香川よりも下位になっていて、人口比から考えると乏しいともいえる。隣の東京で上質なオペラが多く上演されるためであろうが、逆に藤沢市や市川市のように独自性を追求する余地はあると思う。
• 大阪が２位になるのは当然なようだが、実は意外。なぜかというと、関西歌劇団と関西二期会の本拠地が兵庫にあるため、実感として兵庫の方が上位にあるように思えるため。
• ７回で北海道と香川が並び、オペラ活動の全国的な定着がうかがえる。
• 滋賀、新潟、大分は新しい劇場のおかげと思われるが、継続的な公演が期待される。

（国内＋外来の公演数概観）

• ブルノやバーデンのように地方巡演する外来団体が、オペラ上演空白県を埋める役割が大きくなっている。バーデンは東京都心では公演を行わず、妙なポリシーも感じられる。
• 東京は２日に１回の割合でオペラが観れる計算になるが、大阪も１２日に１回の割合となっている。
• 愛知、静岡の東海勢は、外来を含めると国内のみより順位を上げている。地域的原因は不明。
• なお、オペラ空白県が３県あるが、私の調査の限界で、実は公演があったかもしれない。実際、岐阜が０というのは私の追求不足と思われ、未確認ながら１０月に各務原市で創作オペラが上演されたという情報もある。

（作品別公演数概観）

• 新国立劇場の公演を除いても、ほぼ定番のまま。若干、いつもの年より「カルメン」が少なかったように感じる。また同じく若干、「ラ・ボエーム」が多かったようにも感じられる。
• 「こうもり」が多いのはＪ．シュトラウス・イヤーであったためと思われる。（そのあおりで「メリー・ウィドウ」は函館市での２公演のみしかカウントされなかった。）
• 「ドン・ジョヴァンニ」が５回と不作で、内４回が新潟、広島と地方であった。
• 外来もプラスすると「フィガロの結婚」が５８回になるのに対し、「カルメン」は６６回を数える。外来団体での「カルメン」上演数（５３回）は異常値で、この影響で国内団体が「カルメン」を避けたとも考えられる。
• 参考で、国内団体による創作オペラ以外で珍しいものを挙げてみる。

「婚約手形」「狂ってゆくレンツ（リーム）」「ハムレット」「ティレジアスの乳房」「ルクセンブルク伯爵（レハール）」「ウェルテル」「月の世界（ハイドン）」（以上東京）、「ジプシー男爵」（大阪）、「妖精ヴィッリ」（市川）、「夢遊病の女」（相模原）、「群盗（ヴェルディ）」（大津）、「アルバート・ヘリング」（豊中）、「ナイチンゲール（ストラヴィンスキー）」（堺）