２００２年についても、国内オペラ公演の集計をしてみました。ただし、前回同様、外来団体による公演は含んでいませんので、特に県別集計では０になってしまう県でも外来公演があった場合もありますので、ご注意下さい。

公演数集計の基準と限界は前回と同じく、次の通り。

「公演数集計の基準」

「公演数集計の限界」

概観

• 前年はヴェルディ・イヤーであったにもかかわらず、ヴェルディの他作品に関心が集まったあおりで「椿姫」が激減するという珍現象が起きたが、１年たつと「椿姫」の人気はＶ字回復して、トップに上がった。
• 同率トップの「魔笛」もＶ字回復組。しかも今回は新国の助けもなしに２６公演を数えている。
• 他にＶ字回復組としては、「ヘンゼルとグレーテル」「カルメン」「トスカ」などがあるが、新国の助けのない自力回復は「ヘングレ」だけ。特に「カルメン」は前々年は新国なしで２０回もあったのが、今回は新国を除けば５回と、実質的に低迷状態が続いている。「カルメン」は市民オペラでは集客力があると思うし、これでは不当に少ない回数だと思うのだが、上演側の嗜好の変化のせいだろうか。
• 減少組には圧倒的にヴェルディが多い。前回ランクインした作品で圏外に落ちたものが５つもある。ヴェルディ・イヤーが異常だった。
• 「ドン・ジョヴァンニ」も減少。他のモーツァルト作品が上位を維持しているなかでの減少傾向だが、特に理由も見当たらないので、一時的な現象だと思う。
• 「トゥーランドット」が圏外脱落。ここのところオーチャードホールや新国のおかげでランクインしていたが、本来は市民オペラなどでは上演が難しい力のいる作品であるので、やむをえないところ。（ちなみに今回、プッチーニの「トゥーランドット」は１回だけだったが、ブゾーニの作品の方は２回と多かった。）
• 逆に市民オペラでは上演しやすい「ボエーム」も減少。それでも７回だから多いのだけど、「フィガロ」や「椿姫」と並んでもいいぐらいの作品である。
• 「メリー・ウィドウ」が更に減少してついに圏外に。「微笑みの国」「天国と地獄」「マリツァ伯爵夫人」「ウィーン気質」など各地で定番以外のオペレッタに関心がいくようになったあおりだろうか。
• つい数年前まで、有名だけどあまり上演されない「愛の妙薬」だったけれど、ここのところ上演機会が増えて定着しつつある。
• いろんなファルスタッフ（サリエリの「ファルスタッフ」、ニコライの「ウィンザーの陽気な女房たち」、ヴォーン・ウィリアムズの「恋するサー・ジョン」）が上演されたが、大御所ヴェルディの「ファルスタッフ」だけはなぜか上演がなかった。
• 作曲者の没年となった２００１年をはさんで、３年続けて「夕鶴」が６回。何にも影響されずに堅調なのは嬉しい。
  

概観

• 進む東京の一極集中は、ついに２００の大台に。
• 兵庫が２４回を数え２位に。拠点アルカイックホールに限らず、各都市での市民オペラが充実してきている。
• いつも６位あたりの広島が一気に３位。大阪、神奈川をおさえての１８回は大健闘。ただ、アステールプラザに公演が集中していて、他の街に散らばっていないところが、兵庫に及ばない点である。
• 大阪、神奈川が同率４位。神奈川についてはほぼ定位置だが、大阪は大きく減少した。不況の影響を受けやすい街である。
• 前々回２位の愛知は、前回大きく減らし、今回はそのまま低水準で推移している。都心に立派な劇場があるのにもったいない。不況の影響を受けにくい街なのに。
• 前回増加した千葉、静岡、京都は今回減少して、一時的な増加であったことが判明した。
• ここに載っていない県でも、地域のオペラは上演されているはずだし、全部把握するのが困難であることを考えれば、作品別と同様、５回以上のランクにあるところが、実質的に考察対象になることにお含みおきを。