オペラシアターこんにゃく座「花のラ・マンチャ騎士道あるいはドン・キホーテ最後の冒険」

 今回のこんにゃく座の新作は、いつもに比して多少煩雑な作品になっているのかもしれない。あの長い「ドン・キホーテ」を、当然刈り込んでいるとはいえ、3回の旅を全てなぞっていて、それが2時間弱におさめられているのだから、ひとつのシーンの盛り上がりの前に次に移るという感じがしてくる。それと、一人複数役と同時に、一役複数人演じ分けということもあり、せわしい役の入れ替わりも煩雑さの助長となっていそうだ。「ドン・キホーテ」を通読していなければ、それぞれのシーンや、登場人物の行動がどういうことなのか分からないのではないだろうか。

 今回のようにとても小さな芝居小屋での短い作品に仕立てるのであれば、どこかに焦点を絞って、精神的な作品にした方が良かったのでは。または逆に、「ドン・キホーテ」の全体感を出す作品にするのであれば、もう少し中規模の劇場で、上演時間をかけたものにしても良かったのでは、と思われる。

 そうはいっても、この短い作品に「ドン・キホーテ」の個々のエピソードのおもしろさを詰め込み、ちゃんとドン・キホーテの精神的変化もきっちり描かれているのだから、「ドン・キホーテのオペラ」として十分に体裁が整っているのには感心する。オペラの最後のドン・キホーテの死を、セルバンテス自身の死としてまとめているところは、独創的でもあり、なかなかうまく仕上げていたと思う。

 やはり公演の成功は、歌役者の表現力の豊かさにあるところは、いつものこんにゃく座の通りである。性格の違う複数の役をこなしても、それぞれのキャラクターのおもしろさを出しているのは立派である。

(2004年2月14日 シアタートラム)

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