オペラシアターこんにゃく座「あおくんときいろちゃん」

 何年か前の「あおくんときいろちゃん」の初演の時、「舞台こそカラフルで子供向けだが、内容は子供にこびず大人でも十分楽しめる」といった趣旨の新聞評が出た。実はこういった作品にとってもそそられる私としては、行きたいけど、子供向けと思われる公演だけに、行くのを諦めていた。ところが、こんな評を読んでしまうと、やっぱりどうしても観てみたいと思えてくる。そして、そのチャンスをうかがっていた。

 そもそもが子供を対象とした作品であるだけに、保育園の主催とか地域の親子劇場での公演とか、そういったプライベートな公演しかしていない。(妻は「森は生きている」を観たいがために、近所の小学校のプライベート公演に、頼み込んで潜りこませてもらっことがあるが、そこまでの大胆さは私にはない。)こんにゃく座の本公演でも取りあげられそうにないし、しばらくじっと待っていたのだが、公共施設である東京都児童会館で上演されることが分かった。そうと分かれば、どうしたら観ることができるのか、(この際東京都民であることは忘れて)妻が都児童会館に電話して聞いてみた。すると、無料で先着順というではないか。よく分からないが、とにかく早く行って並べばいいらしい。それから、いくら子供向けといっても、次女はまだ幼児にもなりきっていないから大丈夫かと心配したが、何歳以上という制限はないらしい。では、行くしかない。

 ところが、当日は朝から冷たい雨と風。千葉から渋谷まで幼児二人を連れては、結構無茶がある。そう思っていると、妻が娘たちをたたき起こして準備をさせている。行くつもりなのだ。オペラ好きの両親のもとに生まれたばっかりに、朝早く悪天候の中、外出するなんて、娘たちにしてみればとんだ災難である。(さすがの暴風雨に、駅までタクシーを使ったが。)

 公演は1時間だが、オペラ自体は短くて終わりの15分程度だけ。それまでは遊びのような芝居をしながら、随所に歌を聴かせる構成。この前半の歌の部分と後半のオペラの部分は、舞台も登場人物も途切れずにそのままつながっていくのだが、歌とオペラのそれぞれの音楽・歌詞の違いがはっきりと分かるようになっていておもしろい。オペラ自体は、レオ・レオーニの原作に忠実なつくりで、絵本の感動がそのまま舞台になっている、といった感じ。舞台装置は鮮やかな原色で、意外に大きな作りになっているし、小道具がポンポン出てくるし、手品まがいの仕掛けも多く、大人だってずっと目と耳を凝らしてしまう。子供たちだって、小さな子も多いのに、みんな静かに舞台を観ている。うちの本日2歳の誕生日の次女も、(本来なら昼寝の時間帯なのに)1時間まんじりともせず舞台を観ていた。それだけ完成度の高い作品であり、舞台であるわけで、また観たいと思えてくる。

 2歳なりたての次女にとっては初めてのオペラ、5歳の長女にとっては2回目のオペラ、私にとっては322回目のオペラと、それぞれ鑑賞暦にカウントされた。

(2005年1月16日 東京都児童会館)

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