日本オペレッタ協会「ルクセンブルク伯爵」

 レハールは、その題材の切なさと流麗なメロディで、プッチーニ好きにはおあつらえ向きである。私もオペレッタ作曲家の中では一番好きなのがレハールなのであるが、「メリー・ウィドウ」以外はなかなか上演に接することができない。やはり日本では、オペレッタ=ドタバタとして笑える喜劇というイメージがあって、それを覆すような作品の上演は、一般受けしないということだろうか。

 「ルクセンブルク伯爵」は、「メリー・ウィドウ」と「ほほえみの国」の間にある作品。「ほほえみの国」のような悲恋の幕切れというまでは切なくないが、「メリー・ウィドウ」ほどのハッピー・エンドへ向けた安心感はない、微妙な作品。それぞれ思惑があって互いに相手の顔を見ずに3ヵ月後の離婚を前提とした偽装結婚をする男女だが、離婚前日にお互い相手を知らずに顔をあわせて好きになってしまう。恋におちた男女が、実は夫婦であるという、楽しいのだか悲しいのだか分からない話。多分オッフェンバックとかJ.シュトラウスとかだったら楽しい話になるのだろうけど、これはレハールだからなぜか切なさが漂ってくる。レハールの中でもまだ早い時期の作品なので、結末は困難を解決し偽装結婚を無効にして正式に結婚できることになるのだが、場合によっては一日だけの夫婦で離ればなれになる悲恋となっていたかもしれない。もしかしたら後者のような結末になるかもしれないという、そういう不安感が作品の中に漂っているので、楽しいオペレッタでありながら、なぜかプッチーニの時と同じ涙が流れてしまうのである。

 オペレッタが得意なキャストや指揮者がそろった公演であるので、オペレッタ的なおもしろさは他にはないものがある。訳詞も台詞も自然に聞こえるのは、訳詞者の力か、あるいはそれを歌いこなしているキャストの力か。ただひとつ、クラシックも好きな者からの感想をいえば、オーケストラにもう少し厚みがほしいところ。レハールの響きの豊かさは、伴奏だけでも切なくなって涙が出てくるものなのだが、それにはもうちょっとのところで達していなかった。まあ、限られた予算で、ここの団体の特徴を出そうとすれば、やはりキャストの適性を最優先して充実させるところだろうから、そこまで期待してはいけないのかもしれないが。

 2階の一番安い席は、若い男やらおばさんやら一人で観に来ている人が多い。カーテンコールでは手拍子が常であるし、ここの団体のように客席もいっしょにアンコールを合唱することもあるのだが、一人っきりで来ていたら、客席も明るくなって結構恥ずかしいものがある。しかし私のまわりの一人っきりの人たちは、きっちり最後まで参加していた。やはりオペレッタを観に来たのであれば、そういったカーテンコールまでを含めてがオペレッタであることを理解し期待しているツウの人たちなのであろう。

(2005年1月22日 新国立劇場中劇場)

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